鋳鉄の摩耗について

1 材料同士がこすれあうことによる摩耗で、軸と軸受けのような摺動面に生じる。

  (Adhesive wear)

2 材料と粉体が接触による摩耗で粉体摩耗である。(Abrasive wear

3 材料が化学的に腐食された面を他の物質で摩擦することで生じるものである(Corrosive wear

4 材料の接触面の疲労で生じる摩耗(Surface pitting

 

摩耗の原因はこのいずれかによって生じるものであり、摩耗の種類によって材質を選ぶべきであります。

 

マトリックス

 普通鋳鉄は、破面がねずみ色をしているのでねずみ鋳鉄とも呼ばれます。組織は破面の色が示すように、パーライトとグラファイトの混在する組織です。そのため、鋳鉄の摩耗を考える場合、パーライト(素地:マトリックス)を微細化し安定させる事が最も重大なポイントと言えましょう。

 

                                                                             一般的なパーライト組織   フェライト組織(球状黒鉛鋳鉄の組織)

 

鋳鋼の場合は、熱処理によりマトリックスを如何様にも買えることが可能ですが、鋳鉄では元素を添加することにより、パーライトを調整する方法が一般的に用いられていて、熱処理による方法は通常は取られていません。

その他の手法

さらに、注湯温度を高め、型ばらし時間を速めることにより、マトリックスの形状を多少変化させることも可能ですが、鋳造ストレス・鋳造欠陥等発生しやすい要因となり、さらには条件が微妙なため、それを規格化して作業することは推奨するに値しません。

 

添加元素によるパーライトの改善

上述したごとく、パーライトを緻密かつ微細にする(改善)ためには、通常ではCrの添加、あるいはCrMo、もしくはNiCrなどを添加する方法が多くとられていて、我々はその手段を用いています。

この方法の最大の利点は、常に安定した性質を得られ、規格化も容易です。

とはいえ、留意しなくてはならないことは、これら元素の含有量によっては著しく物性が変化し、特長を損ねることがあるので熟達した技術・経験を必要とするのです。

 

Cr添加の影響

Crは強くセメンタイトを安定化しチルを深くする。これを加えれば(Fe,Cr)3Cの他に(Fe,Cr)7C3なる複炭化物も現れ、これらは極めて安定で黒鉛化が容易ではない。

鋳鉄には微量のCrを添加して黒鉛及び素地のパーライトを微細化するが、添加量がある一定量超えると肉厚鋳物以外はチルするので脆くなる。

 

 

 


Cr添加の組織

(黒い部分は微細パーライト、白い部分はセメンタイト)

 

 

Ni-Cr鋳鉄

Niの軟化作用とCrの硬化作用とを組み合わせたNi-Cr鋳鉄は最も広く用いられる特殊鋳鉄で、加工性を害することなく、耐摩耗性・耐熱性・耐食性を持つ。

32kg/mm2前後の抗張力を有する高力鋳物を確実に得ることができる。



Ni-Cr鋳鉄の組織

(レディブライト共晶組織)

 

Mo添加の影響

Moの添加は黒鉛化を幾分阻止するほか、黒鉛及びパーライト素地を細かくする。添加する場合、微量であることが多い。

 Mo鋳鉄は耐摩耗性が強く靭性にとみ、衝撃値・疲労強度も高い。また、高温強度も減少しにくいのも特徴。Moはオーステナイトの変態を遅くし、ある一定以上の添加と適当な冷却速度でベイナイトを発生する。

 

 




Mo添加組織

(黒い部分は微細パーライト、白い部分はセメンタイト)

 

まとめ

以上をまとめると、耐摩耗性向上の方法としては以下の点が考えられます。

 

1 冷却速度を速める事よりも、CSiの含有量を抑えセメンタイト化(白銑化)

を図る。

 

2 他元素を添加し、マトリックスの改善をはかる

 

1は、C(炭素)がグラファイトではなく、セメンタイトという非常に硬い組織として存在するため、耐摩耗性はかなり向上します。しかし、その硬さ故に、強靭性は格段に落ちるため、ほとんど工業製品として採用されることはありません。従って白銑を用いる場合は注意が必要です。

 

2は前述したごとく、例えばCrを添加するとクロムカーバイドが発生し、マトリックスとしてのパーライトが緻密かつ微細化します。稀に、塩浴等特殊な熱処理によって針状パーライト(ベイナイト)を析出させその用途に呈している場合もあります。