§1.どんな鋼種が、最も耐摩耗性に優れているか?
摩耗に強い鋼材は数多く存在しますが、まさにケース・バイ・ケースで、一概に、これが一番と言えるモノはないのです。すなはち摩耗の条件に支配されるからです。しかし、耐摩耗=硬さと仮定するならば、これから説明する、クロム・モリブデン系鋳鉄が最も優れていると言えましょう※1。
(なお、※マークが文中に出てきますが、そこの部分をより細かく知りたいと思はれる方は※マークをお読みください)
まず、※1は、代表的な耐摩耗鋼材を一覧にしたものです。比摩耗という欄があります。これは一般的なクロム・モリブデン鋼(焼入鋼)を100として、その摩損減量を耐摩耗性として現はし比較したものです。
すなわち、この表からみるとクロム・モリブデン鋳鉄が最も優れていると言え、当社はこの点に立脚して、この鋼種を徹底的に研究調査致しました。
なぜ、クロム・モリブデン系が耐摩耗性に優れているかというと、鋼中に炭素・クロムと、モリブデンが含まれていることです。
適正な炭素・クロム・モリブデンのバランスが大切なのです※2。
例えばクロム量が、24〜28%になるとCr/C等量(クロム等量)を悪くするのみならず、残留オーステナイトが未変態のまま残りやすくなるため、鋳物肉厚に影響を及ぼし、かえって硬度低下の原因となり、さらに30〜35%を超えると、フェライトが析出し、より硬度を下げる要因になります。
上記の例からわかるように、Cr/C等量は耐摩耗性に及ぼす重要な要素となります※3。
これに加えて、ここに或る含有元素を調節することで、熱処理時に肉厚が厚くとも芯まで硬化し、製品の厚みにかかわらず、適切な硬度を得ることもできるのです※4
§2.高マンガン鋳鋼について
耐摩耗性といえば、高マンガン鋼があります。これは、安価であると同時に、靭性の高い良い鋼種といえましょう※5。
 この材質は、硬い組織を持っているために耐摩耗性が高いのではありません。硬度はむしろ柔らかで、ネバい性質を持っています。なぜ耐摩耗性に優れているかというと、叩かれたり、衝撃を受けると金属の結晶が歪み、それが耐摩耗性につながるのです。
高マンガン鋳鋼が対摩耗に優れていることは論を待たないのですが、それなりの欠点もあります。
その一つは機械加工が極めて困難で、穴あけ加工など出来ません。もう一つは熱処理による亀裂の問題です。
この材質は約1.000℃に熱してから急激に冷水に投入します。これを「水靭処理」と言って、焼入れではありません。この処理によって、この鋼種は硬くなるのではなく、反対に粘り(靭性)を増すのです。この際に成分間のバランスや、製品の温度、冷やす水の温度等々の管理が大事なファクターなのです。※6
あまり知られていないことですが、再加熱した場合、とくに300〜400℃に熱せられると急速に強度が低下する脆性の問題です。
この点について、ご興味があれば当社の経験に基づく実験と研究レポートの抜粋を記載しますので、ご精読いただければ幸いです。
その他、弊社は上記以外にもJIS規格は勿論のこと、※1に記載されている材質はもとより、 規格にない、独自な材質も供給することができます。ちなみに、上記の比較写真に用いた耐摩耗用パーツは当社独自な成分配合になっています。
※1:各鋼種の摩耗比較

財団法人 綜合鋳物センター 鋳物のアブレーシブ摩耗 より抜粋
※2:クロム等量と硬度との関係
Cr/Cと硬度の関係
※3:カーボン・クロム含有量とカーバイドの関係について
※4:或る添加元素量と、焼入深度との関係
財団法人 綜合鋳物センター 鋳物のアブレーシブ摩耗 より抜粋
※5・6:高マンガン鋼ついての当社レポート(抜粋)