夢追い人・・・その名は錬金術師      第3話


プラトンやアリストテレス以前のギリシャの哲学者は、物質の本体、今でいう元素を、火、空気、水、土を4元素として物質の基礎としています。このことは紀元前360年頃の著書、「ティマイオス」に述べていて、この書籍は、後世、理論的化学についての最初の論文と言われています。
しかし、そののちの錬金術にとってはアリストテレスの説が重要視されてきました。  彼によると、「元素とは、物質を構成する最小の成分であり、物を分解していくと最後に残るものである。それは4っの基本的特性、即ち熱、湿、冷、寒があり、4っの元素、火、水、空気、土で構成され、全ての物は、これら4つの特性と、4っの元素の比率の組み合わせから成り立っている」と説いています。
紀元前六世紀に、古代ギリシャの学者、ターレスは「すべて水からなっている。なぜなら水がなければ生きていけない。人間も植物も水によって大きくなり、水分が含まれ、硫黄だって、金ですら溶かせば水のような液体になる」と唱えたとか。
下って15世紀の頃、ジーベルは、「自然界にある金属が目標とする完全体、すなはち金と銀は、水銀と硫黄が適切な比率で混合したものであり、地中の熱によって長い時間をかけて成熟したもので、完全でないもの、例えば錫、鉛、銅、鉄になるのは比率と純度の欠如であり熱の不足に起因する」と述べています。
さらに、アリストテレスは「自然と、神は何事も無益に行うことはなく、完全なるものに向かっている」と唱え、ベイコンの「自然はいつも目標を持ち、完全体すなはち、金に到達するために絶え間なく努力をしている」と,同意化しているのです。
それにしても、古代、中世の偉人、哲学者がどう言うとも、私たち近代の科学を学んだものにとって、これらの学説は到底理解できないことです。
とはいえ、現在、これが真実だとまかり通るっている理論、学説だって、これから何千年の後になって、「21世紀の科学者は、こんなことを信じていたんだって・・・」と言われるのかもしれませんが・・・然しそれこそ科学というものかもしれません。
錬金術について,その説の信憑性やら科学的根拠を議論するのは無駄なことと考えます。
したがって「錬金術師は化学の生みの親」という言い方は、必ずしも当たっていません。錬金術では「金」は作れなかったのです。金が作れなければ職業として成り立たず、一方、鉱山から掘り出される鉱石から金属を取り出す精錬に携わる技師たちは、金属を分離する技術を着実に重ねていました。
むしろ秘密主義、神懸り的な錬金術師を置き去りにして,銅の中から残留する金、銀を分離する技術を確立しました。
この時、日本の銅には不純物として金、銀の含有が多いことから、江戸時代唯一の長崎港から大量に運び出されたのです。