第十話 熱処理(日本刀を主体に)アラカルト5

●焼曲がりとは…

日本熱処理学会名誉会員 大和久重雄


焼曲り:

 焼割れの次に困るのが焼曲りです。バナナ曲りです。バナナ曲がりは早く冷えた側が凸(伸びる)になるのです。逆に遅く冷えた側が凹(縮む)のです。

 日本刀の反りは切刃側が肉薄で棟部より早く冷えるから出張るのです。これが日本刀の反りで、反りは一種の焼曲りなのです。切刃部の冷え方を置土(粘土)などを塗って加減すると反りをコントロール出来るのです。

 だから焼曲りしないように焼入れするには均一急冷(ユニフォーム・クエンチ)が大切なのです。均一急冷すれば焼曲りは防げます。それには先ず品物の形を整え、肉厚を均等にし、焼入液をよく攪拌することです。この均一急冷するためには、ハードとソフトの両面からの研究が大切で、世界各国の研究テーマになっています。焼割れはゼロには出来ますが、焼曲りはゼロにはできません。限りなくゼロに近づける努力が必要なのです。

 曲ったものを直すにはプレス矯正が普通ですが、これを冷間でやっているのが一般的のスタイルです。これはいけません。冷間矯正すると曲りはとれますが、ストレスが残ります。ストレスは人間の健康にもよくありませんね。この残留ストレスによって、またまた曲がりが再発してくるのです。これを時効変形といいます。だから冷間矯正でなしに温間矯正(100〜250℃)して下さい。温間矯正すればストレスが残らないので我慢は出ません。

 人間のストレスはお湯に入ると取れるのと同じように、鋼のストレスもお湯づけすると取れるのです。だから曲り直しするときには鋼部品をお湯づけにして温間矯正し、矯正した後またお湯に入れてください。時効変形(置き曲り)がでなくなります。

 このお湯づけは効果がありますので是非実行してください。剃刀や包丁は使っていると切刃にストレスが溜まりますが、使用後100℃のお湯づけをするとストレスがとれて切味が長持ちします。(東北大金研実験結果)