第十二話  欧州の街でみかけた鋳物

(有)仁メタル 代表取締役社長 田嶋 光三


 バルセロナには、天才ガウディが設計した聖家族教会が、青空に向かってそそり立っています。まるで砂浜で子供たちが、その小さな指からポトポトと垂らして造った砂の楼閣に似た姿をしています。

 ガウディによると宇宙は曲線からなっているというのです。これはアールヌーボーの影響で、幾重にも重なった曲線と光が織りなしていて、その線はひたすら空に向かい収斂し、しかも、全てのバランスが考慮されているとのことです。

 設計の最初の段階では幾重にも糸を張り巡らせし、それに錘を吊り下げ、それをそのまま、鋳物屋ふうにいえばトンボさせています。だからバランスがとれているのだそうです。

 けっして「狂気の産物」と片付けてしまうことはできません。

 ところで、ガウディの父親が鋳物屋であったことをご存知でしたか?

 ベランダの飾り立てられたフェンス、曲がりくねったドアも、鋳物で造られているのを実際に見て触って驚きました。見切りも、抜け勾配も確認しました。ドアの把手、丁番もガウディ自身が石膏を捏ねて形を造った鋳物であることも驚きです。とにかく金属製品は建築の曲線を描き易いとのことなのです。

 ヨーロッパの街のあちこちに鋳物が取り入れられています。日本では、古くは梵鐘、灯籠、天水桶と広く使われていましたが、今は少なくなり「景観鋳物」と称して街路灯とか車止めなど、あるいは道路のマンホール蓋にみる程度です。

 その点、ミラノのチミトロモニュメンターレ墓地で見た彫刻鋳物を配した墓標群は悲しみに溢れ、陰惨、かつ壮絶でした。

モロッコのカサブランカで見たドア・ノッカーも青銅鋳物で形が何ともユニークでした。もともと英雄の銅像、噴水など日本とは比べようもなく多いのですが、何気なく置かれている鋳造品、たとえば馬の手綱を結ぶための輪を石の壁に埋め込んであったり、テムズ川の河岸に舫い鋼を結ぶためにの太いわっぱを口にくわえたライオンの頭などデザイン的にも優れた鋳造品を見ることができるのです。

夕日に染まる海からのサックスの調べか、コーランのうねりが聞こえてきそうです。

 産業機械の部品しか造ったことのない私には、未来に作品が残せることや、街に溶け込んだ自分の姿を想像しては羨ましさが沸きあがってくるのです。