第九話 熱処理(日本刀を主体に)アラカルト4

●焼割れとは…

日本熱処理学会名誉会員 大和久重雄


焼割れ:

 水焼入れで一番困るのは焼割れと焼曲りです。割れたら品物はオシャカになるからです。そこえいくと焼曲りは直せば直るからまだいいのです。使いものになります。

 焼割れには誤解があります。真赤な銅を水の中に入れた瞬間ピチッといつも割れると思っているからです。これが真赤なウソなんです。銅は水に入れた瞬間割れるのは茶碗とコップだけです。

 銅が割れるのは水に入れた瞬間ではなく、約300℃ぐらいに冷えて来たときです。つまり、割れる温度は決っているのです。この温度をMs点といい、鋼はこの温度になると焼きが入って硬くなるのです。焼きが入ると鋼は膨張するのです(長さで0.3%+、体積で0.9%+)。冷えつつあった鋼が急に膨張するのですからたまったものではありません。このムリが祟って割れるのです。冷やして膨張するのです。焼きが入らなければ割れません。だから焼割れというのです。

 焼割れを防ぐにはMs点をゆっくり冷やして無理なく膨張させてやることです。早く冷やしてはいけません。つまり、「始め早く、後ゆっくり」冷やすことが「割れず、硬く」焼きを入れる「コツ」なのです。早く、ゆっくり冷やすにはMs点頃は早く、Ms点になったら水中から引き上げて空冷することです。それには水焼入れすると、ジュク、ジュク、シューッと水鳴りします。このシューッという水鳴りが止む瞬間引き上げればいいのです。つまり「ジュク、ジュク、シューッでサット出し」ということです。これが水入れの「コツ」というものです。またこれは品物の直径3mmにつき1秒間水冷してから引き上げてもOKです。これを時間焼入れ又は引上げ焼入れといいます。つまり「ジュク、ジュク、シューッでサット出し」と「3mm1秒、焼入れのコツ」と覚えて下さい。