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鋳鋼、鋳鉄に及ぼす酸素の影響は、炭素の含有量の差異はあっても、金属冶金学的には同じと考えられます。
この表題の、酸化溶解、還元溶解とは、塩基性電気炉を用いた鉄系の溶解についてであって、 鉄系鋳物の諸性質に及ぼす酸素の影響についての議論とは若干、趣が異なります。鋳鉄、鋳鋼に及ぼす酸素(O)の挙動は、硫黄(S)と同じような働きを示し、 それについての研究論文は、枚挙の暇がありません。 これについては、機会があれば触れることにします。 さて、鋳鋼の溶解の場合、電気炉…主にエルー式電気炉ですが、溶け落ち(melt down)が始まった時点で、酸化溶解期に入ります。正確に言うと第一次と、第二次酸化溶解期があります。第一次は石灰石、生石灰、鉄鉱石、酸化鉄等を電気炉内に放り込み、スラグを作ります。スラグが掻き出せる温度になったら、できるだけ素早く掻き出して、再度、同じ石灰石等々のスラグ材を投入して昇温します。これらのスラグ材は、溶湯の表面を出来るだけ均一に覆うようにスコップで投げ込むことが肝要です。場合によっては軽く酸素をパイプを使って、バブリングします。この作業の目的は脱燐(P)です。1.600℃付近に達したら、あらためてもっと多量に酸素(O)を送り込みます。これが第二次酸化溶解期です。酸素吹き込み量は炉の容量にもよりますが5~10s/p2が目安となります。このステージの主な役目は、脱硫(S)脱炭(C)です。ここでも石灰石等のスラグ材を投入します。そして昇温に伴い、目的の炭素(C)、珪素(Si)成分の、やや低目になったところで終了して、スラグを除去します。この段階で、酸化溶解は終了です。 続いて還元溶解開始となります。還元溶解もスラグ材を利用します。ここで用いるのはフェロシリコン、蛍石(CaF2)コークス粉を、先程の石灰石、生石灰等のスラグ材に加えて投入して、再び通電します。前者は還元剤としての役目であり、石灰等のスラグ材は溶湯表面の酸化を防ぎ、軟らかいスラグを生成するためのものです。還元溶解されているかどうかの大まかな判定は、掻き出されたスラグの色で判り、それは白色をしていなければなりません。酸化溶解の終了時に炭素(C)等を低目に抑える、と前述しましたが、実はこれらの作業が残っていて、還元材として装入したフェロアロイからの加炭とか、珪素(Si)のアップに備えるためで、このステージで最終成分を調整するからです。成分分析が終わったら、いよいよ出湯です。 これらの作業は、鋳鋼に限ったことではありません。最近はそういう言葉も使われていませんが、「強靭鋳鉄」、たとえば芋虫状黒鉛鋳鉄(センダイトメタル)のような脱硫(S)脱酸(0)をして片状黒鉛を球状化して強靭化するというときにも用いられました。 このレポートを作成しながら、ふとキューポラの溶湯を思い出しました。それは、電気炉だけで溶解した鋳鉄に比べ、鋳造性がはるかに良い、不良発生の少ない、いわゆる「ノタリ」のいい溶湯なのです。キューポラはコークス、石灰石、地金(銑鉄、合金鉄を含む)を、層状に積み重ねて装入し、風箱から羽口を通して、強烈な風を送り込みます。石灰石と地金は溶かされて、真っ赤に熱せられたコークスの間を滴り落ちてゆきます。それはやがて、風が吹き荒んでいない、赤熱したベッドコークスに達して溜まるのです。考えてみたら、羽口から上のエリアーは酸化溶解であり、その下のベッドコークス層は赤熱されたコークス、即ち還元剤として、最も有効な炭素の塊の中にあるわけで、まさに還元溶解に当たるのではないでしょうか? はからずもキューポラ炉内では、酸化、還元溶解のメカニズムが、ちょうど良い按配に調整されて、その結果、あのように「まったり」した溶湯が流れ出す、ということではないでしょうか |